あの頃の八高線。

越生、明覚、小川町、竹沢、折原・・・想い出すだけでも素敵な景色の連続だった。

採石地から溜池のカーブ、小さなサミットからのストレート・・。今ではみんな撮れなくなってしまった撮影地・・・。

そういえば当時住んでいた大宮から越生の黒山三滝や金勝山の小川少年自然の家に自転車漕いでいったのは中学生の頃。サイクリングと称して通学用チャリの保安部品を外し軽量化を図り挑んだことが今となっては懐かしい。

鉄道写真を撮るようになっても目指したのはやっぱり彼の地域や秩父方面だったりする。結局自分の方位磁針はそっちにしか向かっていなかったようで今もって苦笑する。

秩父困民党甲大隊長新井周三郎の出身地は西ノ入だったりするし・・。

自分の中では秩父に向かう奥武蔵の地は今も昔も懐かしい風景そのままです。

1981年2月 ペンタ6×7 200mm

1982年9月 ペンタ6×7 55mm    

いずれも八高線。

風が口ずさむ。

大好きな十勝の地に風たちがメロディを口ずさむ。

十勝に入り約一週間ずうっと雨交じりの日が続いた。その間ロケハンで散々うろうろした挙句のやっとの晴天・・。そしてほんの少し前に車を停めて4×5機材一式を担ぎ出して此処はと思うところで撮影。ところがアクセルを踏んで僅か数分・・・。走り始めた車のウインドグラスの左に素敵な落葉松が目に付いた。もう一度4×5を引っ張り出して牧草地の脇に三脚を立てた。

そうしていると、やがて気持ちの良い風に頭を揺らした落葉松たちもが踊りだす・・。清々しい空の下、そう、晴れの陽を一緒に口笛を吹きながら・・・。

去年久しぶりに彼のアクセルを停めた地を訪ねた・・・。口笛を吹き笑っていた落葉松林は無くなっていた・・・。

ウイスタ4×5VX テレアートン270mm 50D。

1987年8月   足寄。