帳降りる頃。

帳降りる頃、星々が輝きだした。暫くすると甲斐駒の稜線に雲が湧いてきた。

やがて空一面に雲がせり出しあっという間に星々の輝きは奪われてしまった。

誰もいない田んぼの傍らで3時間、結局、空はこれきり晴れなかった。

10時過ぎに撮影が終わると野宿場所へ移動。一献始めると目の前の木に動く影、目を凝らすと正体はムササビのようだ。しばらく眺めていると飛んだ~。三十数年前に北海道で見た以来。その時は同じ日にヒグマの足跡やフンを見たんだっけ。今日はツキノワグマ出ないでくれよと願いテントにもぐりこんだ。

2020年3月12日   小海線。

千曲川の故郷。

島崎藤村の「千曲川のスケッチ」に描かれる川上八か村。

明治時代半ばまで川上村は梓山、秋山、大深山、御所平などの八つの村に分けられていたそうだ。眼下の集落は峠を一つ越した地に当たるがその当時は長野県下でも一、二を争う辺境の地であったことに変わりはない。

藤村は「千曲川の上流に当たって川上の八か村というのがある。その辺は信州の中で最も不便な、白米は唯病人に頂かせるほどの貧しい荒れた山奥の一つである」と書いている。

写真に見えるように家々の周りには畑と水田。川に寄り添うように集落形成されている。此処は野辺山や清里などとは違い戦前戦後の開拓地ではなく佐久甲州街道の道筋に当たる地である。

新道(国道141号)からはずれ時間が止まったかのような山間集落。どこか地元秩父の山懐の風景に似ているからか懐かしさを覚える地である。

2020年3月12日   小海線。

甲斐駒バックに山を駆け下りる。

38年前に撮影来た時の記憶ではもう少し撮りやすかったような。

他の場所でも木々の成長で見通せないところが多々。当たり前のことだが月日を感じる場所がこの区間では特に感じられた。とっておきの俯瞰はものの見事に山と化していたし。

2020年3月12日   小海線。