その年の暮れ会社を辞めた。
何処へ行こう風が吹く・・・山頭火の詩ではないけれど目指したのは北の大地。
二十歳の冬だった。
斜里のユースで逢った君は自分と同じ独り旅。
帰りのキハの座席で君が持ってきたウォークマン・・。片耳ずつひとつのイヤホンを並んで聞いたあのメロディは今も忘れない。
どうしているのか・・生きていてくれ・・・。
突然亡くなってしまった身近な人を最近感じた自分が今まさに生きていることが当たり前ではないことを想うと自分自身なんだか不思議な感じもしたりして・・。
この歳になれば年上は当たり前、自分の年齢も含めて後の時間はたかが知れているかもしれない・・。
だから間違っても自分より若い死は切ない・・・。
さっきテレビを見ている女房と娘の横顔をちらっと見た。笑っているふたり・・・。
いつまでも元気でいてくれと願った。
まったく勝手な馬鹿親父である自分。今独りキーボードを叩いている。
その昔、あの北の大地の駅で見送ったキハが遠ざかり・遠ざかり・・遠ざかり・・・。
「あ~あ~夜よ泣かないで・・・」
1983年12月 北海道。