先週も身延線に撮影に来たが思うような写真が撮れなくて・・・。
夜、新宿から夜行に乗り甲府で降りて身延線の始発まで駅で寝ることにした。
改札を出た待合室では酔っ払いや浮浪者がたむろし、エアコンも無い天井にはでっかい扇風機が回っていた。
到底寝苦しくなることは判りきっていた。
構内には電気の消えた旧国も眠っている。数枚のバルブでお茶を濁し、改札をくぐり駅のベンチで寝ることとした。
銀箱の肩掛けを腕にまわす、なんちゃって防犯をし、三脚にタオルや着替えを巻き、枕とする。
当然夏の夜なのでシュラフはいらず、シュラフカバーのみに入り就寝。
ちょうど上半身が屋根からでており、朝起きたらその上半身のみ朝露でぬれていた。
一番電車に乗り、甲斐上野駅へ向かう。
ガラガラの車内は窓を開けると夏のくさいきれの匂いと共に、昨日の車内の雑踏が交じり合う。
駅へ着く。駅前でジュースを一本所望し、さぁ葡萄畑の丘へと向かう田舎道を、昇ったばかりの太陽を銀箱に光らせ、
すぐさま額に汗して丘の坂道へ差し掛かる。
残念。南アルプスの全容は見えず、そのどっしりとした山容の裾を見せている。
今、此処へ居られることが嬉しい。
夏の日差しに汗することが嬉しい。
そしてシャッターを切ることが嬉しい。
山を降り、いくつかの撮影地を廻り甲府の駅へと戻ってきた。
考えて見ると、めしを食った記憶が無い。
料金の安い夜行バスで新宿へと戻りさらに帰路についた。
18歳の夏。
僕の青春の日。
1981年7月 身延線 東花輪~甲斐上野。