何度通ったことだろう。
幾重にも重なるその山襞にひとつひとつ営みがある。
明治17年11月に起こった出来事は、正にそんな小さな狭い狭い、影と日向の耕地の人々の叫びにも似た、やむに已まれずして起こった民衆エネルギーの爆発であった。
度重なる官民に対する陳情は無視され地下に潜ってのオルグ活動、そしてついに時の政府の出先である郡役所や警察署を占拠。悪徳高利貸しに対する焼き討ち。軍律5か条を掲げ正々堂々と戦った。
僅か数日間とはいえ、時の政府を震撼させ最終的には鎮台を動員せざる状態にまでに昇華させた其の行軍はあっぱれであった。
われら秩父困民党 暴徒と呼ばれ暴動といわれることを拒否しない
山襞の底辺は此処高いところからでは見えない。そう、高いところから自分の足で峠を一つ一つ越えて行かなければ何ひとつ見えるものは無い。
秩父は山の中・・・。峠の国。
1985年12月 秩父界隈。
ウイスタ4×5VX ジンマー210mm RFP