霧の朝。

本格的に雪景色になるのにはもう少し。今日は霜が降りて寒い朝。

学生たちの通学のために親御さんが駅まで車で送ってくると次々に踵を返すようにハンドルを捌き帰ってゆく。

列車が入ってきた。

車が駅の傍に滑り込む。

「はやく!はやく!」彼女の声が聞こえる。

車の扉をバタンと閉めて駆け足。

「気を付けてなぁ~・・・」

送ってきた父親に後ろ手に小さく手を振る。

濃い朝霧の中、列車が発車してゆく。

安堵したかのようにお父さんは踵を返すでもなく車の中から霧の列車を見送っていた。

2019年12月   只見線。

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