秩父のオクリ。

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耕地には、いつもと変わることなく冬の日差し。

甲州街道を外れ雁坂の峠を越し、さまざまな文化や生活物資が、ここ栃本をすぎ秩父の町へと入っていった。
数年前、国道140号線が雁坂嶺の真下をぶち抜き今に至る。
しかし、昔とは違い、さほど文化や生活の行き来があるようには思えない。

高校生の頃、行き止まりの国道に漠然と疑問を持った。

やっぱり秩父の”オクリ”だね。
耕地の下から移動販売の車が来たことを知らせている。

秋。

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ハレの日、勤しむ人々。
ケの日、沈黙する。

ハンノキに掛けられた今年の実りが、秋の日を浴びて、
その湿度を天上に帰してゆく。
その山上からアキアカネが使者として舞う。

空と地と水。
今日ばかりは、ケを厭い、ハレに感謝して。

加茂の山ふところ。

カムイッシュ。

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神の住むところ。

夕どき、右手の山の先、日が落ちる。

山影は、蒼く沈む。

国立公園内で、繰り返される営み。
そんなことも知らずに、内地からの観光者。

観光者たる所業。そして、観光者を飲み込みむ所業。

風と共に静かに蔭ゆく・・・蒼き湖。

秋風が吹くと、すでに、その景色を思い出す。

誇り。

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北海道の十勝平野を旅した頃。

河岸段丘の畑を見下ろすその場所で、民間委託され自家用車で郵便配達をするひとりのおばさんに会った。

挨拶を交わし、また次の配達先に向かうおばさん。小一時間もした頃、また、過のおばさんが坂道を上がってきた。
下の町でわざわざ自分のために弁当やらジュースを買ってきてくれた。

ひとしきり、都会に出て行った息子の話などをする中、おばさんが言った一言。
『ここから見る景色はいちばんよ。季節の移り変わりや、朝な夕なに見るここが好きなのよ』
『ここが自慢なのよ』、と。

誇り高く生きている人がそこには居た。
何気ない景色の中に。

夕暮れを前に、河岸段丘を見下ろす。