北海道の十勝平野を旅した頃。
河岸段丘の畑を見下ろすその場所で、民間委託され自家用車で郵便配達をするひとりのおばさんに会った。
挨拶を交わし、また次の配達先に向かうおばさん。小一時間もした頃、また、過のおばさんが坂道を上がってきた。
下の町でわざわざ自分のために弁当やらジュースを買ってきてくれた。
ひとしきり、都会に出て行った息子の話などをする中、おばさんが言った一言。
『ここから見る景色はいちばんよ。季節の移り変わりや、朝な夕なに見るここが好きなのよ』
『ここが自慢なのよ』、と。
誇り高く生きている人がそこには居た。
何気ない景色の中に。
夕暮れを前に、河岸段丘を見下ろす。