麦秋にて。

想いがけずに麦秋の景色に出逢った。

武甲山と麦秋。なんとも意外な出遭いだった。

今秩父にいるのに遠い北の地を想い出した。そうあの時の景色・・・。

「人は同じだけ風を感じている

 同じ日差し受け雨に打たれる・・・

 ・・・言葉にするほど幸せでなく涙にするほど不幸でもない・・・。」

凡庸という歌詞の一節だが、今、落ち着かない毎日を過ごす中で何もできない自分がまるであの頃北の地を放浪していた時に見た色と重なる・・・。

不思議な感覚はきっと麦秋のせいだ・・・。

2021年6月9日   秩父界隈。

 

武甲山を望む。

別に早起きするでもなく、おもむろにハンドルをひょいと捌くと秩父の景色。

今日は140号線をのんびりと走りまずは秩父神社へ。そして少しだけ更にひょいと捌いて武甲山を眺める此処へ。

写真家清水武甲氏の栃本の麦秋はあまりにも有名。焼き畑農業から連なる山間地の農耕の歴史の究極点であった其の麦畑が消えてもう随分と経つことを同じ秩父出身の千嶋壽氏は述べている。

今、秩父に行くとやたらと手打ち蕎麦の看板を見かける。なるほど、うどんより蕎麦の方がイメージ的に観光客が入りやすいのだろう・・。別に蕎麦を愚弄するつもりはない。が・・。本来秩父は県北や県西部と一緒で小麦文化ではなかったのか・・。武蔵野うどん、すったて、おきりこみ・・。みんな小麦文化のような気がするのは気のせいだろうか。

雁坂峠に図太いトンネルを穿ち甲州との道が開いて久しい。かつては其の雁坂峠や十文字峠、そして十石峠に目を向け西からの文化を吸収した時代は終わり、今は東の都会である首都圏からの観光客に目を向ける秩父の地になっている。

むろん、それが時代の流れというものか・・・。

今日は小さな麦秋に想いを馳せる。

2021年6月9日   秩父界隈。