開拓地の陽。

十勝が好きで随分とこの場所へは通った。

うねりの無い河岸段丘の開拓地・・開拓前の原生林を想うと気が遠くなるような平原。

民間委託の郵便配達のおばさんが声をかけてくれた。そして暫くすると配達がひと段落したおばさんの車が土埃を巻き上げ坂を上がってくるのが見える。

手にはたくさんの食べ物や飲み物を抱えて持って行けと・・。そして都会に行った息子の事やらを話し・・。さっき野宿している自分の話を聞いて同じ年頃であろう息子を想ってのことなのだろう。

おばさんが言った「ここから見える景色好きなのよね~自慢なのよ・・」

・・・すべてが報われた気がした・・・。ふるさとを想うその言葉にこころの中で相づちを打った。

なんでもない景色も捨てたもんじゃない。開拓地には人の営みが続いているよ。

遅い春に心躍らせ 短い夏に汗を流し 早い秋に気を急かされ 長い冬に心を仕舞い・・・。生きている・・・。

今は夏、乾布を被るとピントグラスを覗く額から汗が流れて・・・。

ウイスタ4×5VX フジノンT400 50D

1987年8月   十勝管内。