百鬼園先生。

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大きな、飛んでも無い大きなソナタを、この急行列車が
走りながら演奏している。
線路が東京から新潟に跨る巨大な楽器の弦である。
清水隧道のある清水峠はその弦を支えた駒である。
雄揮無比な旋律を奏しながら走って行く。
レールの切れ目を刻む音にアクセントがある。
乗客はその迫力に牽かれて、座席に揺られながら
みんなで呼吸を合わせている様に思う。

内田百閒
「雪中新潟阿房列車より」

時間を気にせずして旅を楽しむ。
出来れば最低半日ぐらいは列車に乗っていたい。
便利なことは良いけれど飄々と漂う時間も必要です。
いろいろなことを考えながら。

雪の少ない雪国への車内にて。