喜多方から熱塩までの客車の中、車内検札で補充券に鋏を入れてくれたのは若い車掌さんだった。
熱塩駅は、記念館となり残っていた。
傍らに客車が保存されていた。
ペンキを塗りなおしたばかりなのか、揮発性の塗料の匂いが
まだ残っているようだった。
夏草が生い茂る夏の日の夕暮れ。
蒸気機関車のブームが去った駅には、
虫の声と、時々そばを通る車の音だけがしていた。
茶色い客車から窓を開けた、昼間の草いきれと夏の夕方の匂いが混ざり合っていた。
喜多方から熱塩までの客車の中、車内検札で補充券に鋏を入れてくれたのは若い車掌さんだった。
熱塩駅は、記念館となり残っていた。
傍らに客車が保存されていた。
ペンキを塗りなおしたばかりなのか、揮発性の塗料の匂いが
まだ残っているようだった。
夏草が生い茂る夏の日の夕暮れ。
蒸気機関車のブームが去った駅には、
虫の声と、時々そばを通る車の音だけがしていた。
茶色い客車から窓を開けた、昼間の草いきれと夏の夕方の匂いが混ざり合っていた。
久しく、履くことのなくなってしまった靴。
手入れをしたままだ。
革とクリームの匂いが、あのときの山行を彷彿とさせる。
いとおしく苦しくもある過去。
山靴を眺め
過のひとを想い出すかな
夜の潟に
冬の使者の声を聞く
7月の低温。8月の酷暑。
実りの秋に、機械が刻む文明の足音。
少し前の風の足音。
傍を自分の足跡。其処へ佇むという事。
遠くには見慣れた山の尾根。
明日は雨だと、天気予報が告げている。